観覧車に思い出を

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「君には一日我には一生」
こんなことを呟いても、あなたには騒々しく聞こえる夏の音のただ一つにしか聞こえていないのだろう。最後に約束したこの観覧車に乗ることは覚えてくれていたようだが。
私が何を話しても反応すらしない。今日の夕飯の話だろうが、会話に困ったときの天気の話だろうが、まるで聞こえていないかのように観覧車の窓から遥か彼方を眺めているだけ。なぜ答えないのか、私にはわかっている。そして、あなたは答えてくれてなくても私のことをずっと頭の中で考えてくれていることもわかっている。
時間とは残酷なもので、もうすぐ観覧車から降りなければならない。あなたは一人、観覧車からおりる。どこか満足げでただ愁いを帯びた表情で一人、観覧車から降りる。
私は最後の日に、あなたの満足そうな顔を見れて良かった。
七日目に私は二度目の終わりを迎える。音もなく遊園地のアスファルトに落ちた。
また一つ夏の音が消えた。
その他
公開:25/04/26 05:18

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