おばあちゃんの庭

赤やピンク、白に紫。
この季節のおばあちゃんの庭は、いっせいに咲いたツツジでにぎやかになる。
造園をなりわいにしていたおじいちゃんが作った庭だけど、いっぺんに咲いて終わってしまうからわたしは好きじゃない。
毎年、さらっと眺めるだけで終わりにしている。
それをおばあちゃんに伝えたら、意外な答えが返ってきた。
「嫁いできた翌年の春、こどもたちやあなたが生まれて初めて迎えた春……長年寄り添ったひとが亡くなった時に心をなだめてくれたのもこのツツジだった。私には思い出が重なって見えるよ」
おばあちゃんはわたしに、庭を好きになるよう強要しない。
だけど今年の見え方が変わったのはたしかだ。
ツツジを背景にして、家族写真を撮ることにした。
新しい思い出がまたひとつ増えるように。