匿名

「みんなやってるから、いいだろう」

スマホを見つめ、主人公はふとそんなことを思った。タイムラインに流れた炎上、無関係な他人の批判。みんなが叩いているから、別にいいかと。

指が勝手に動く。気づけばコメントを打ち、「自業自得だな」と送信していた。顔も名前もない、ただの匿名の言葉。それで終わりだと思っていた。

だが次の日、スマホが異常に反応する。コメントを送るたび、どこか不安に駆られ、さらに深く引き込まれていく。止められない。

「どうして…？」

声が聞こえた。画面に浮かんだのは、見覚えのない顔。目を背けようとしたが、もう遅かった。

「お前が書いたんだろう？」

その問いが突き刺さる。言葉が現実になることを、主人公は知った時には遅すぎた。

その日の午後、ニュースで流れた報道。無意識に放ったコメントが、誰かの命を狂わせていた。