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四月の末。椿も花を落し切り、木蔭を覆い尽す紅が美しい。当代の神主はまめに境内を掃く人だから、椿は敢て残してあるのだろう。
帰りの参道。歩みを阻んだものが他にもあった。
もう夕暮れ――?
鳥居を前に私は一瞬、慄えた。まずい、面接の刻限を過ぎてしまった。
頭上に降り掛かる桜の枝を仰ぎ見る。そこに僅かばかりの花があった。連日の雨によってか黄の斑が浮んでいるけども、五つの花弁を散らさず残っている。その花ごしに晴天を認め、再び足許を見た。往きは気附かなかったが、夥しい雄蘂(おしべ)が緋毛氈とばかりに落ち、参拝者に踏まれてか萎びて、玉砂利に殆ど付着している。
花弁は風で散逸したらしい。
そうだ。散り際の桜は、こんな血の滲んだ色を出す。
椿よりも濃い、その赤でつい夕空を聯想してしまったようだ。
私は鳥居をくぐり、職場への道を急ぐ。
どうか。来年の新人は永く留まって居てほしいものだ。
帰りの参道。歩みを阻んだものが他にもあった。
もう夕暮れ――?
鳥居を前に私は一瞬、慄えた。まずい、面接の刻限を過ぎてしまった。
頭上に降り掛かる桜の枝を仰ぎ見る。そこに僅かばかりの花があった。連日の雨によってか黄の斑が浮んでいるけども、五つの花弁を散らさず残っている。その花ごしに晴天を認め、再び足許を見た。往きは気附かなかったが、夥しい雄蘂(おしべ)が緋毛氈とばかりに落ち、参拝者に踏まれてか萎びて、玉砂利に殆ど付着している。
花弁は風で散逸したらしい。
そうだ。散り際の桜は、こんな血の滲んだ色を出す。
椿よりも濃い、その赤でつい夕空を聯想してしまったようだ。
私は鳥居をくぐり、職場への道を急ぐ。
どうか。来年の新人は永く留まって居てほしいものだ。
その他
公開:25/04/26 21:34
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