名前のない宝物

私の毎日はたぶん普通だ。学校に行って、友だちとしゃべって、たまにケンカして。でも、目をこらしてみると普通の中にはふしぎがいっぱいある。

たとえば、不思議な形の雲。道端に咲いてる小さな花。水たまりの中には知らない世界が広がってたりする。

大人たちはそれを見逃している。
でも、私には見える。だってそれは、世界にこっそり落ちてる「名前のない宝物」だから。

あの日も友だちと帰る途中、ふと足元に広がる水たまりを見つけた。水面にはまるで小さな町が映っているみたいだった。知らない町。誰もいない町。 「見て！」私は声をかけた。けれど、友だちはもう足早に歩いていってしまった。大人たちが見落としているものを私はいつだって探し続ける。

たぶん、世界にはまだまだ、名前のない宝物がいっぱい落ちているんだ。 大人たちには見えないけど、私には見える。

その宝物が、いつか私を大切にしてくれるような気がするから。