海鮮丼屋〈火星〉

0
4

行きつけの海鮮丼屋がある。店名は〈火星〉。ふしぎな名前だ。星にちなむなら〈海王星〉だってあるだろうに…
「本当はそうしたかったんだよ。でもね、兄貴らに押し付けられちゃったんだな」

僕は〈火星〉の店主の長兄が営む〈海王星〉を訪れた。しかし〈火星〉ほど繁盛はしていない。鮮度は悪くないのに何故?
「名前が全てだ。考えてみ。海に行って海の幸を食いたいかね」
今度は次兄の〈水星〉を訪れた。そこの味も店主の考えも概ね同じだった。星を巡る旅はおしまい。彼らは三人兄妹だったのだ。

「じゃ、あたしは一番良い名前を譲ってもらったわけか。嬉しいけどよ、あたし一人でこの先何年続くかねぇ」
「そんな、僕はここがないと生きてけないよ」
「ふぅーん?そー言ってくれんなら、あんたをうちのソートクに任命。兄貴んとこ侵略して、客をせしめるとするか!」

彼女が語る“火星移住計画”のために僕はまた星を巡ることになりそうだ。
恋愛
公開:25/04/23 21:16
更新:25/04/23 21:37

紅石紗良

よろしくお願いします!

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容