さびしんぼ人形

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「やられたらやり返すからね」

「そんな事言われたの、言われたほうの身になってほしいね」

学校で酷く傷ついた私は、旅の行商人に話を聞いてもらっていた。
すると…

「じゃあ、コレはどう?」

渡されたのは頭がうさぎの小さな人形。よく見ると両方のほっぺに涙の粒がついている。

「この人形の背中に相手の名前を貼るとね、その人は独りで死んでしまうんだよ」

独りで…。

「惨めだろ?」

私は震える手で人形を購入した。

…買ったものの、どうも使う気になれない。だって、その子だって同じ人間だし、善い所もあれば悪い所もあるのは当然だし。

「それに、ちょっと心がすれ違っただけだし…決めた、あなたの事は使わないね。」

そう決めて幾星霜。
晩年の私は、ベッドの上で家族や孫達に囲まれていた。
そろそろね…そう思ったとき。

『ありがとう』

声がした。あの人形だ。
あなたもさびしかったんだね。
その他
公開:25/04/22 18:30

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