タヌ吉の夢

タヌ吉は今日も森の神社で、大吉のおみくじを探しています。百枚集められたら神様が、人に化けさせてくれるからです。この村から海外に移住した仲間に会って、その地が良ければ自分も移住しようと考えていました。
今日見つけた大吉のおみくじは雨に濡れ切れていました。風を吹かせて半分に切ったのは神様でした。
彼が移住してしまうと村には誰も居なくなり、毎朝神社に来る彼と会える楽しみがなくなるからです。
百枚に後一枚なのにとガッカリした彼の後ろ姿を見ながら、神様も決心しました。
若者の願いを叶えてやるのが、本来の私の仕事だ。
タヌ吉よ、人になれと声を掛けると、彼は素敵な若者に変身しました。
神様、有難うございます。私が海外に行ったら必ず住所をご連絡します。
神様も移って来て下さい。仲間もきっと種々な願いを叶えて貰いたく待っていますからと告げ旅立って行きました。
静かになった神社で神様は渡航準備を始めています。