名画でショート056『ロンドン島の若き王と王子』(ポール・ドラローシュ)

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2人は王と王子である。仲の良い兄弟である。2人は最高権力者のはずだ。だが、自らの運命は他人の手に握られていることも、十分に自覚していた。
2人の部屋はロンドン塔の一番奥。豪華なベッドに品の良い衣装。ペットの愛犬も一緒に暮らしている。
何ひとつ不自由のない生活。
足りないのは、自由だ。日の光を浴びること。同年代の子供たちと一緒に遊ぶこと。両親の愛に浸ること。
それと、確実に明日がくるという安心感。
これらが全て欠けている。
2人は現実を忘れるように本を読みふける。
ふっと、愛犬がドアに向かって吠えた。兄が愛犬が吠える方向に顔を向ける。ついに運命の時がやってきた。その恐怖に、兄の目がひときわ大きくなる。
ドアの奥から、屈強な大人たちが、なだれ込んできた。
その他
公開:25/04/24 23:49

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