ポチの約束

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ぼくは散歩が好きじゃない。だけど毎日、朝七時と夕方五時に鳴いて、散歩をせがむようにしている。
「ワンワン、ワンワンワン!」
飼い主のおじいさんはまず舌打ちをして、それからぶつぶつ文句を言いながら、ぼくの首輪にリードを通す。
「まったくおまえときたら、ばあさんがいなくなっても元気に散歩へ行こうとするんだからな。こっちにはそんな気力がないのに。ほら行くぞ、ポチ」
「ワンワン、ワンワンワン!」
ぼくを川原で拾ってくれたおばあさんはもうこの世にいない。ほんとうはぼくだって悲しいし、一日中ぐうたらしたい。でもおばあさんと約束したんだ、おじいさんが長生きするよう散歩へ連れて行くって。
川原の桜は終わってしまったけれど、春の陽射しと草花はぼくたちをやさしく迎え入れてくれる。あんなに面倒くさがっていたのに、まんざらでもないおじいさんの顔を見たら、ぼくはうれしくてその場をぐるぐる回ってしまった。
その他
公開:25/04/20 11:05
更新:25/04/20 11:51

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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