勇者

今日、聖剣に選ばれし勇者が魔王である我に勝負を挑んできた。
武器を構える勇者。それは聖剣ではなかった。
それは”こんぼう”だった。それもただのこんぼうではない。
そのこんぼうは赤黒い血がこびりついていた。固まったそれにより通常のこんぼうより一回り大きかった。
勇者が笑みを浮かべる。それはアメリカンな映画でシリアルキラーが浮かべる狂気の笑みだった。
勇者がこんぼうを振りかざす。
アカン！これマジでアカン奴や！
我は逃げ出した。
しかし勇者はこんぼうを手に執拗に追ってくる！
誰か！助けて！
だが我の声に応じるものはない。
それもその筈。廊下には部下だったものが転がっていた。頭から血を流し、倒れていた。
ついに追い詰められる我。
もうダメだ！
そう思った瞬間、我は目が覚めた。
…
良かった。夢か。
枕元に置いた水差しに手を伸ばす。
その手が掴まれた。こんぼうを持った勇者がベッドの下から出てきた。