近所の神社にて

工事現場で働く私の父は毎日、近所の神社にお参りしてから仕事に向かう。
その神社には神様はいない。悪い妖怪が３体、封印されているらしい。
しかし封印された３体の妖怪が、一つ目小僧、からかさお化け、ろくろ首、と聞き思わず笑ってしまう。全然怖くないや。
そんな私に、父が真剣な顔で教えてくれた。
一つ目小僧をバカにすると、事故で片目を失うぞ、と。
からかさお化けを軽くみると、傘の骨が折れるかの如く骨折するぞ、と。
ろくろ首を甘くみると、ロープのような長いものが首に巻き付き締めあげられるぞ、と。
それらは工事現場で働く父だからこそ、気をつけなければいけない事。
身近にある危険性に、思わずゾッとした。
だからこそ父は妖怪達が悪さしないよう、神社にお参りしているのだという。
ごめん。父さん。もう遅い。
私は先日、ろくろ首の封印を解いてしまった。
だから時々、財布の紐が私の首を締めようとしてくる。