いじめられっ子代行

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Tはいじめられっ子だ。
Tは勉強も運動も苦手、容姿は平凡、話し方はどこか鈍い。Tの鞄はゴミ箱に捨てられ、机には落書き、クラスメイトから殴られ、罵声を浴びせられる。Tはそれに静かに耐える。それが、Tの日常だ。
しかし、この「いじめ」は決して問題にならない。
なぜなら、Tは人間そっくりに作られた「いじめられっ子代行」ロボットだからだ。

ロボットが普及した未来では、人間の弱者への攻撃性を引き受け、人間の生徒をいじめから守るために、Tのようなロボットが学校に導入されていた。
ロボットであるTは痛みを感じず、ロボット三原則に従い、人間を傷つける事も無い。
Tはただただクラスメイトからの罵声や暴力を浴びながら、彼らの行為を記録する。

ある日、クラスメイトからの激しい暴力によって、Tは壊れた。壊れたTの記録装置は、いじめのデータを学校に送信。いじめっ子たちは処分され、クラスには静寂とTだけが残った。
SF
公開:25/04/21 19:19
更新:25/04/21 23:06

加賀美 秋彦

加賀美 秋彦と申します。
学生時代からのショートショート好きが高じて、2025年4月から自分でも書き始めました。
SF作品を書く事が多いですが、幅広く色々なジャンルの作品を書いていきたいと思っております。
よろしくお願い致します。
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