歌と幽霊

中学の音楽室に、幽霊が出るのです。

さつきさんが放課後に、ピアノの練習を終えて、部屋を出る時にふり返ると。
ピアノの前に学生服の男の子が座っていて、すっと消える。そんな事がよくあります。
噂では、それは過去の生徒で、音に敏感な男子が、神経症をこじらせて亡くなり、霊になったという。

さて、さつきさんは、秋の中学の文化祭で、友人のマツコさんの歌の伴奏をする事になりました。
ある日、音楽室に向かうと、マツコさんの大きな悲鳴が。そう、出たのです。
次の日もまた彼女の悲鳴が。その時は、消えゆく男の子の姿を、さつきさんも見ました。

でも。その後、霊はあまり出なくなりました。特に、マツコさんがいると、まず出ません。
かっぷくがよく、喉も太い、マツコさんのパワフルな叫び声。歌の伴奏をしながら、さつきさんはその訳が判る気がしました。

男の子は音に繊細でした。
ちょっとウザかったのかもしれませんね。