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古びた長屋の、柱がきしむ音さえ聞こえそうな深夜。家族の寝息が、障子の向こうに静かに漂っている。
きよは清太の部屋に忍び込んでいた。足音を殺し、浴衣の裾を手で押さえながら。
月明かりだけが、二人の輪郭をなぞっている。
「音、立てないで……みんな寝てるんだから」
そう言ったのはきよなのに、先に吐息を荒らげたのは彼女だった。清太の指が静かに襟元から入り込むと、畳の感触に背中を沈めながら、きよは口元を袖で押さえる。
家の中は静寂に包まれていた。けれど、この部屋だけは、押し殺された呼吸と、止まらぬ欲の音に満ちていた。
「見つかったら……どうするの?」
清太は答えない。ただ、彼女の脚を掴み、引き寄せる。
夜風が障子を揺らす音の中、誰にも知られぬ情事は、静かに、けれど確かに深まっていた。
きよは清太の部屋に忍び込んでいた。足音を殺し、浴衣の裾を手で押さえながら。
月明かりだけが、二人の輪郭をなぞっている。
「音、立てないで……みんな寝てるんだから」
そう言ったのはきよなのに、先に吐息を荒らげたのは彼女だった。清太の指が静かに襟元から入り込むと、畳の感触に背中を沈めながら、きよは口元を袖で押さえる。
家の中は静寂に包まれていた。けれど、この部屋だけは、押し殺された呼吸と、止まらぬ欲の音に満ちていた。
「見つかったら……どうするの?」
清太は答えない。ただ、彼女の脚を掴み、引き寄せる。
夜風が障子を揺らす音の中、誰にも知られぬ情事は、静かに、けれど確かに深まっていた。
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公開:25/04/15 07:02
夜と硝子と、少しの記憶。
耽美・幻想・退廃を主食に綴ります。
静かに崩れるものが好き。
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