狛替え(こまがえ)

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うちの近所の神社では、年の初めに狛替えを行う。
神社につきものの狛犬の代わりに、十二支の動物が台座に上り、一年ずつお宮の番をするのだ。多様性を尊重した結果だとか、狛犬労働組合から働き方改革の提言があったとか、諸説囁かれているが真相は定かではない。ともあれ子年の狛鼠から亥年の狛猪まで、十二対の動物石像が造られ、バラエティ豊かに参拝客を出迎えてくれる事になった。

さて、何度目かの狛替えが戌年に差し掛かった大晦日、ある動物から物言いがついた。
十二支に漏れたため、全く出番のない猫である。
「狛犬さんは長年活躍してきたし、たまには代わってほしいにゃ」
昨今の猫ブームや、眷属使役機会均等法の観点から無下にできず、急きょ狛猫を登場させる事に決まった。

明けて猫年元旦。初詣がてら狛猫像を拝もうと鳥居をくぐり、思わず吹き出してしまった。
台座には阿吽の石像ではなく、片手を上げた狛招き猫が鎮座していた。
ファンタジー
公開:25/04/14 16:20
ラジオ『月の音色』 月の文学館 テーマ:近所の神社にて

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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