相談に乗ってくれる財布

少し前までは貯金なんて出来なかった俺だが、財布を新しくした事でそれは改善した。
以前は考えなしに買い物を楽しんでいた。だが今では買う前に財布と相談だ。財布は俺に的確なアドバイスをくれる。
財布は俺達家族の記念日を全て覚えている。プレゼントの相談にも乗ってくれる。本当に優秀な財布さ。
優秀だからこそ、財布は相談料を取る。そうしてしょっ引かれた金は冠婚葬祭から出産祝いまで、急な出費に幅広く使われる。まさに大人な財布である。
しかしそんな財布にも寿命が来た。もう相談には乗ってくれないのか…悲しむ俺の肩を妻が叩く。
「これ、財布がアンタにって。これで新しい財布を買いな」
それは財布が俺に残してくれた遺産だった。
「そのお金、財布が私に相談料としてくれたものなんだよ。私、財布からアンタの愚痴を結構聞かされていたからね」
財布がワイフに相談を…
「寂しいのはアンタだけじゃないんだ。さ、早く買ってきな」