アイシャ・ドー

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《抹茶を塗ると、視界に映るあらゆる物の侘び寂びがわかるのです。そうして美的感覚を鍛えるのよ》

私はお師匠の言葉を反芻しながら瞼に指を走らせる。

《この道で何より大切なのは、クレンジングです。いいですか。終わりが肝心なのよ。アイシャドウを落とす時は念入りにしなければ。抹茶は肌に残りやすいですから、お修行が足りないと朝から顔が真っ青でクレオパトラさんのご主人も何事かと心配されるでしょう》

「ねぇ、起きてシーザー。私の顔、変かしら?」
「Hmm…もぅ…めなぃょ…」

今日は年に一度のお花見。
公園に着き、真っ先にお師匠の元へ挨拶に行くと…さすがだわ。空色の着物に金色の帯。そして瞼は…黄色?なんて春らしいの!私は挨拶のついでに尋ねてみた。するとお師匠は辺りを憚りながらそっと教えてくれた。

「…これは鬱金(うこん)よ。えぇと、二日酔いはご存知?…そう…あなたにこのお修行はまだ早いわね…」
その他
公開:25/04/16 21:02

紅石紗良

よろしくお願いします!

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