声
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母は、野菜のうち、ダイコンの声だけが、聞こえてしまう。今日の晩御飯は、父のリクエストで、焼いたサンマだ。夕方、台所から、母の声が聞こえてくる。「いいのね?いいわね?いいのね?わかった。すぐ終わらせるからね」これからダイコンをすりおろすのだ。私はヘッドホンを着け、音楽を流す。私にはダイコンの声は聞こえないが、ダイコンをすりおろしている時の母のうめき声を聞きたくないのだ。しばらく音楽に没頭していると、サンマが焼けるいい匂いが漂ってきた。私はヘッドホンを外し、台所に行く。母はまだ鼻をすすっている。そろそろ父に、このことを打ち明けた方がいいのではないか、と思う。
ホラー
公開:25/04/11 23:56
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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