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季節の変わり目になると、神社からの往神依頼が増える。
今日の患社(かんしゃ)は近所の稲荷さんだ。神主装束を白衣に着替え、医療鞄を抱えて出発した。
ビニールカーテンの張られた鳥居をくぐり、手水舎でアルコール消毒を済ませて境内に入る。社殿を護る狐の像は、赤い前掛けの代わりにマスクで口を覆い、ご神木はひっきりなしに梢を折ってくしゃみしている。社殿の柱も床も、晴天にもかかわらず濡れており、雨漏りかと思えば鼻水が止まらないらしい。
「お辛そうですね。失礼します」
真っ赤に充血したご神体の鏡に専用の聴神器(ちょうしんき)を当てる。
予想通り花粉症だ。季節柄症状の軽快を願う人が多く、ご利益と引き換えにもらってしまったのだろう。
「お札出しておきますね。お大事に」
アレルギー平癒のお札を処方し、社殿を後にする。
モットーは八百万の病を癒す神対応。
神社のかかりつけ神社、医社(いしゃ)の戦いは続く。
今日の患社(かんしゃ)は近所の稲荷さんだ。神主装束を白衣に着替え、医療鞄を抱えて出発した。
ビニールカーテンの張られた鳥居をくぐり、手水舎でアルコール消毒を済ませて境内に入る。社殿を護る狐の像は、赤い前掛けの代わりにマスクで口を覆い、ご神木はひっきりなしに梢を折ってくしゃみしている。社殿の柱も床も、晴天にもかかわらず濡れており、雨漏りかと思えば鼻水が止まらないらしい。
「お辛そうですね。失礼します」
真っ赤に充血したご神体の鏡に専用の聴神器(ちょうしんき)を当てる。
予想通り花粉症だ。季節柄症状の軽快を願う人が多く、ご利益と引き換えにもらってしまったのだろう。
「お札出しておきますね。お大事に」
アレルギー平癒のお札を処方し、社殿を後にする。
モットーは八百万の病を癒す神対応。
神社のかかりつけ神社、医社(いしゃ)の戦いは続く。
ファンタジー
公開:25/04/14 16:18
ラジオ『月の音色』
月の文学館
テーマ:近所の神社にて
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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