別嬪さん
0
2
「今年も会えたなぁ」
妻を亡くして10年になるわしは、妻とよく逢いに来た別嬪さんのところに来ていた。
別嬪さんは何も喋らない。ただそこに佇んでいるだけだが、それが良い。
「来年はわからんが…また会いに来たいなぁ」
出来れば来年も来たいが、わしももう歳だからなぁと呟く。別嬪さんは何も言わないが、ふわりと吹いた風に煽られて、わしに手土産をくれた。
「ああ、やっぱり綺麗だなぁ。やっぱり、来年も来なくちゃなぁ。婆さんも、ここに来るの、楽しみにしてたから」
花びら…ではなく、丸々と落ちてきた花を手に取る。
薄紅の着物は既に多くが若緑色に変わり始めている。今年は、会えるのはこれが最後だ。
「じゃあ、また来年。わしも、あんたも、生きとりゃな」
そう言って立ち去る。
別嬪さんは何も言わないが、また、風に煽られた桜の花びらが、「また来てね」と言っているようだった。
妻を亡くして10年になるわしは、妻とよく逢いに来た別嬪さんのところに来ていた。
別嬪さんは何も喋らない。ただそこに佇んでいるだけだが、それが良い。
「来年はわからんが…また会いに来たいなぁ」
出来れば来年も来たいが、わしももう歳だからなぁと呟く。別嬪さんは何も言わないが、ふわりと吹いた風に煽られて、わしに手土産をくれた。
「ああ、やっぱり綺麗だなぁ。やっぱり、来年も来なくちゃなぁ。婆さんも、ここに来るの、楽しみにしてたから」
花びら…ではなく、丸々と落ちてきた花を手に取る。
薄紅の着物は既に多くが若緑色に変わり始めている。今年は、会えるのはこれが最後だ。
「じゃあ、また来年。わしも、あんたも、生きとりゃな」
そう言って立ち去る。
別嬪さんは何も言わないが、また、風に煽られた桜の花びらが、「また来てね」と言っているようだった。
その他
公開:25/04/14 07:34
コメントはありません
ログインするとコメントを投稿できます