日進月歩の餅

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餅は戦慄した。
自分は全く成長していない、と。

大昔から旨い旨いと愛されてきたが、そこに欠片も己が努力はあっただろうか?
毎年の窒息死。その責任を負ったことがかつてあったろうか?

餅は決意した。
(次の正月は誰も死なせはしない)

花見団子に別れを告げ、餅は修行を始めた。
羊羹やくずきりの元では水分を習得。
次いで栗きんとん、大学芋に師事し、栄養価を高める。
火鉢が恋しい季節は煎餅を訪れ、粘り気を飛ばす大詰めに明け暮れた。

そして年が明け…

人々は言葉に詰まってしまった。餅の研鑽と殆んど完璧な食物と云ってよい姿に感服したのである。どんな労いの言葉も相応しくなく、人々はいっそ何も言わない方がよいと考えた。

人が死ぬことはないものの、賑わいの消失した三が日。

餅は悩む。
(なぜみんな黙っているんだろう?)

冬も盛りを過ぎ…

餅は今度は恵方巻に相談してみようと考えた。
ファンタジー
公開:25/04/13 11:01

紅石紗良

よろしくお願いします!

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