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「首の皮一枚で許されたな」
そう言われて私は胸を撫で下ろした、不思議だ。思っていた以上に自分は落ち着いている。これからどう生きるのかと言わんばかりに貴方はこちらを振り向く。振り向いた姿に深い夜に浮かび上がる半月が重なった貴方は誰にも敵わない。
このまま深く、深く、深海の成れ果てまで沈んでいきたい。貴方の遠い背中を辿って見知らぬ地へ歩んで行きたい。深海なら良いだろう涙が海と化して貴方への愛を語るに適している。いつもの如く浮ついた事ばかり考えている私に呆れたのか貴方はまた振り返った。私の大好きな背中を見せこの場から離れようと大きな一歩を踏み出す。
「待ってください」
振り絞った声は後に続かない。嫌いになれないこの街に儚く輝いた光から目が離れない。それは希望か絶望か私には分からない。
「私は、私は」
雨は降る。
「海月に、なりたいです」
雪にはならない、また雨が降る。
排水溝が溢れてしまう。
その他
公開:25/04/07 02:00
更新:25/04/07 01:56

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