言葉
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僕の声が紙になった。舌癌だった。
切除が医者から告げられた時、僕は神様視点だった。言い換えれば、俯瞰的だったと言える。あの時はどうして俯瞰できたのか。お喋りが好きな僕が、声を取られて正気でいられるはずがないというのに。
切除前、元パートナーにポツリと言われたことがあった。
「居酒屋とかで聞き直すこととかなくなるね!」
この言葉を聞いて僕は、逆上してしまった。彼女なりのフォローなのは、当時の僕にも分かった。
それでも僕は、逆上してしまった。その時の僕は、早口で怒鳴っていたのに、特に聞き返されることはなかった。
その日、彼女は彼女ではなくなった。
嫌なことは重なるものだ。
ただ、切除直後の僥倖とでも言うのだろうか。
人間らしくなくなってしまった僕が、人間であることの証明として、目から湧き水が溢れ出ていた。
切除が医者から告げられた時、僕は神様視点だった。言い換えれば、俯瞰的だったと言える。あの時はどうして俯瞰できたのか。お喋りが好きな僕が、声を取られて正気でいられるはずがないというのに。
切除前、元パートナーにポツリと言われたことがあった。
「居酒屋とかで聞き直すこととかなくなるね!」
この言葉を聞いて僕は、逆上してしまった。彼女なりのフォローなのは、当時の僕にも分かった。
それでも僕は、逆上してしまった。その時の僕は、早口で怒鳴っていたのに、特に聞き返されることはなかった。
その日、彼女は彼女ではなくなった。
嫌なことは重なるものだ。
ただ、切除直後の僥倖とでも言うのだろうか。
人間らしくなくなってしまった僕が、人間であることの証明として、目から湧き水が溢れ出ていた。
公開:25/04/06 21:34
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