虎穴に入らずんば虎子を得ず

「愛が欲しい！」
そう叫ぶ俺に親友が「愛の巣からとってくればいいじゃん」と言って、背の高い木の頂上付近を指さした。
「ほら、あそこ。羽の生えたハートマークみたいなのが飛び回っているだろう。あそこに愛の巣がある。今の時期だとまだ羽の生えていない愛もいるだろうから、それを捕まえて自分のものにすればいいんだよ」
あんな高いところに…愛ってのは手に入れるのも一苦労なんだな。
「ちなみに、真実の愛なら…すぐ近くにいるかもよ」
顔を赤くする親友の周りを、羽の生えたハートマークが飛び回っていた。
俺はそれに手を伸ばす。
「捕まえた」
まさか俺と親友、両想いだったとは…いや～、わざわざあんな高いところまで登る手間が省けたぜ。
「こっちこそ。捕まえた」
親友は俺の周囲を飛ぶ羽の生えたハートを根こそぎ捕獲しては檻の中へと詰め込んでいく。
「一生、愛でてあげるからね」
恍惚の笑みを浮かべる親友から目が離せない。