ピンセットと震え

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 地平線から、太陽が昇ってくる。巨大なピンセットにつままれて、太陽が昇ってくる。太陽は、自分の力では、もう昇ることができなくなっていた。神はピンセットを用意した。神はそれで太陽を昇らせた。太陽の光が、街を包む。その光は揺れている。神の手がぷるぷるしているからだ。日没の時間まで、太陽は神の手とともにかすかに震えながら、街を照らし続ける。やがて地平線の向こうに太陽が沈む。ピンセットが空に消える。そして一陣の風が吹く。それは神のため息だ。そのため息は、酒のにおいがする。
ファンタジー
公開:25/04/06 16:04

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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