掌（てのひら）占い師

評判の女占い師は四十代後半で視覚障害者、全盲である。彼女の占いは掌をみる。もちろん手相ではない。客の手を両手でそっと包み込みしばらくそのまま。そして客の性格、仕事、悩みなどを語り出す。それが実によく当たると噂が広がり、彼女の店には行列が絶えない。
ある日、一人の老人が店にやってきた。その様子で老人もまた視覚障害者であることを察した彼女は「どうぞ、お座りください」と優しく声をかけ、いつものように客の手を両手でそっと包み込んだ。そしてじっと掌をそのままにして長い間ぴくりとも動かない。やがて「お父さん、、」と声を洩らした。老人もにこやかな表情で了解したようである。彼女は幼い頃に事情があり父親と離ればなれになって音信が途絶えた。何十年ぶりかの父と娘の再会である。噂を聞きつけて父が来てくれると信じて占い師を続けていたことを彼女は告げ、二人は喜びの涙を流した。その翌日、女占い師は店を閉じた。