温泉の街
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「お母さん、まだあ?」
家族旅行で訪れた温泉街で、人で溢れたアーケードの中、干物屋で商品を選ぶお母さんを近くのベンチで待っていた。
すると、路地裏の道路のヒビから吹き出す白い煙を見つけた。
「あれは源泉の煙だよ。ここは温泉の街だから」
隣に座るお父さんは、あくびを噛み殺しながら呟いた。
煙はその場留まると、ゆらゆらと形を変え、小学生くらいの女の子の姿になった。ひび割れの煙は次は小さな芝犬となり、女の子と一緒にアーケードの人混みに駆けていった。
どこにいくのだろう、と目で追っていると、彼女の輪郭が歪んだ。彼女だけではなかった。商店街を歩く無数の人達の体がゆらゆら揺れて混ざりあった。
びゅー
強い潮風がアーケードを通りぬけた。目を伏せ、顔を上げると無人となった商店街にお母さんが財布をもって立ちつくしていた。
やれやれ、帰れそうだ。
ひび割れは煙を絶えず吹き出し続けた。
家族旅行で訪れた温泉街で、人で溢れたアーケードの中、干物屋で商品を選ぶお母さんを近くのベンチで待っていた。
すると、路地裏の道路のヒビから吹き出す白い煙を見つけた。
「あれは源泉の煙だよ。ここは温泉の街だから」
隣に座るお父さんは、あくびを噛み殺しながら呟いた。
煙はその場留まると、ゆらゆらと形を変え、小学生くらいの女の子の姿になった。ひび割れの煙は次は小さな芝犬となり、女の子と一緒にアーケードの人混みに駆けていった。
どこにいくのだろう、と目で追っていると、彼女の輪郭が歪んだ。彼女だけではなかった。商店街を歩く無数の人達の体がゆらゆら揺れて混ざりあった。
びゅー
強い潮風がアーケードを通りぬけた。目を伏せ、顔を上げると無人となった商店街にお母さんが財布をもって立ちつくしていた。
やれやれ、帰れそうだ。
ひび割れは煙を絶えず吹き出し続けた。
ファンタジー
公開:25/04/09 08:11
マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。
100 サクラ
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