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森林浴をと森を散策する。いつもの小川の水が少ない。「元気ないね」と川に声をかけた。川はか細い声で言う「最近、記憶が薄れるの」「認知症?」「違うわよ。あたし、若い川よ」「それで?」「あたしって山から流れるでしょ。でも山の記憶がないの。昔は青々とした山のことをよく覚えていたんだけれど」「うむ」「それでね、未来のこともわからなくなるの」「未来?」「あたしってこの先、他の川と交わってそれから大きくなり一級河川と一緒に最後は海に出るのね。そんな未来のことが当たり前だと思えなくて、誰とも一緒になれないような気がするの」「それで水量が減ったのか、元気だせよ」と慰めようと川に足を踏み入れた。硬いと思った川底は柔らかく足が沈む。「あたし、考えたの。地下に潜ろうって。地下水と一緒に温かい地中でゆったりと流れるの。貴方も一緒に来る?」川底は沼みたいにずぶずぶと脚も身体も沈んでゆく。川よ、俺はいいよ、助けてくれ!
その他
公開:25/04/08 18:10
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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