嘘の花

私は自社農園で大量の嘘の花を育てている。
嘘の花は見た目こそ普通の花だが、その蜜を少しでも摂取すると誰もが嘘つきになる。
そもそも嘘の花は自然界にも多く自生しており、その花の蜜を吸った昆虫の多くが擬態という能力を持つ。
そんな昆虫を蜜ごと口にした動物もまた、狩りにおいて騙し討ちという技術を身に着ける。
嘘は何も悪い事ばかりではない。生物が生き残る上で必要な進化でもある。
新社会人が社会に適応するのにだって嘘は必要だ。バカ正直で居続けるのを悪いとは言わないが、嘘をつく事で楽になる事だってある。嘘を身に着けておくに越した事はない。
それに、噓から出た実って言葉があるだろう？
嘘の花は枯れると実を付ける。その実こそ、真実、と呼ばれるものだ。
真実から採れた種から嘘の花が咲く。嘘と真は表裏一体なんだ。
だから私は嘘にまみれた仕事をしていながらも「愛している」と妻に嘘偽りない気持ちを伝えられている。