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看板の「珈琲店」が似合いの店である。常連たちは雨の店と呼ぶ。雨の日は店に入れるからである。にわか雨ではなく終日降り続く雨の日だけに。扉を開けて傘の滴を払い傘立てに入れる。店には大きなテーブルが十くらいある。席に腰を下ろすと店員が珈琲のカップを木製のテーブルに置いてゆく。椅子にもたれる。窓は全部ブラインドが閉まっている。そのうち静かに音楽が流れる。音楽が流れるのは雨が上がったからだが、店内の客に外の様子はわからない。皆、珈琲を味わい音楽を聴く。外が晴れている間は音楽が流れる。その間は扉が閉まり誰も入れない。ただ音楽が流れる。クラシックやジャズ、シャンソンなど。店長の趣味だろう。晴れている間は何日も何日も。しかし客は一向に気にせず音楽を聴き続ける。雨が再び降り始めると音楽は止む。それをしおに客たちは席を立つ。傘を間違えないように持って扉を開けると外は入った時と同じようにざあざあ降りの雨である。
その他
公開:25/04/01 09:43
更新:25/04/01 11:51
更新:25/04/01 11:51
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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