視線の先に

「今日、先生の机から、皆から預かった給食費が盗まれた。もし、このクラスに給食費を盗んだ犯人がいるのなら、名乗り出てほしい。今なら先生、怒らない。これ以上罪を問わない。正直に言ってくれ。給食費を盗んだ犯人は、このクラスにいるのか！？」

誰も名乗り出ない。

「…ああ、そうだな。皆が見ている前だと名乗り出辛いだろう。分かった。皆、目を閉じろ。
…閉じたな。よし。今、この教室で目を開けているのは先生だけだ。もし、犯人がいるのなら手を上げてくれ。」

その言葉に先生の背後、天井から吊るされたテレビに映る政治家が手を挙げた。

「…そうか。分かった。このクラスには、給食費を盗んだ犯人はいない。」

先生は振り返るとテレビに映る政治家を睨みつけた。
その視線に驚き、懐から給食費を書かれた封筒を落とす政治家。
画面の外に逃げ出そうとしていた政治家を先生はすぐに捕まえて、テレビの中から引きずり出した。