名画でショート053『マリアナ・デ・アウストリア』(アン・カレーニョ・デ・ミランダ)

1
2

彼女はスペイン・ハプスブルク家の滅亡を予感していた。
彼女が産んだ唯一の王位継承者、カルロス2世は極端な近親婚の末に生まれた障碍者で、虚弱体質の上に知能薄弱。絶えずよだれを垂らしている子だった。
彼女は祈りを捧げた。きっと息子は呪われているだけだ。呪いが解ければ、元気に育ってくれる。子供らしい笑顔を見せてくれる。
高貴なる青い血の後継者なのだから。
彼女は白い服を着て、黒いガウンを身にまとい、静かに祈りを捧げ続けた。椅子に座り、ふとしたときに、正気に戻る。顔を上げる。
そのとき、近習が彼女の顔を見た。
まるで血が抜けきったかのような、白い顔をしている。
もうこの王家は終わりなのだ。もはや、彼女の肉体は死者の国に入りかけている。
近習の目に映る彼女の顔が、ぼやけていくのを感じた。
その他
公開:25/04/03 19:42

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容