木工バンド

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半世紀前、当時の仲間三人とともにバンドを結成した。
みんな貧しくまともな楽器が買えなかったものだから、考えを寄せあって木製の楽器を作り、演奏することにした。

「おい〜、誰だよ、葉っぱを吹き鳴らしたみてえな笛の音出しやがったのは!」
「おまえだよ!」

毎晩のように集まっては薄めた酒を酌み交わし、ほろ酔い加減で音を合わせた日々が、今も昨日のことのように思い出される。
七十歳を迎え、私は最も仲が良かったマコトに電話した。
彼は自宅におらず、老人ホームに入っていた。
聞けば、バンドを組んでいたシゲと一太郎も同じホームに入居しているのだと言う。

「おまえも来いよ! そしたらまた『木工バンド』を組もうぜ!」

妻が亡くなり、生きる意味を見失っていたが、マコトのひと言で私の命がつながった。
私はすぐに家を売り払うことにした。
その他
公開:25/04/03 08:11

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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