あの肉を食べたい！

美味そうな匂いに誘われ入った焼肉屋台。
鶏肉、牛肉、豚肉と並ぶ中、羊肉、鯨肉と来て、鰐肉、カンガルー肉とマニアック路線までメニューに並ぶ。
そんな中、気になったのは『あ肉』。
あ？あってなんだ？
「”あ”は”あ”ですよお客さん。まあ、珍しい動物だから知らないのも無理ないですね」
周りの客を見れば「あの肉が食えるなんて今日はツイている！」「あの肉最高！」と舌鼓を打っている。
そこまで言うなら、試しに食ってみるか…
両面しっかりと火を通し、塩で頂く。
あの肉は、これまで食べたどんな肉よりも美味かった。溢れ出す肉汁が、弾力が、肉とは何たるかを教えてくれる。
あの肉を追加で注文する。レモンやタレで食べると、また違った一面を見せてくれる。一口ごとに、あの肉に胃袋と心を掴まれた。
だが残念な事に、あの肉を取り扱っているのはこの屋台だけのようだ。
だから私は今夜も屋台を探す。ああ…早くあの肉を食べたい！