理解ある職場

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 近所に、赤ん坊の自販機がある。
 路地裏に、それは、影のように立っている。自販機だから、光を放っているのに、それは影の塊のような印象を私に与える。
 その赤ん坊の自販機には、ちょっとしたサーヴィスとして、一本の鋏が備え付けられている。もちろん、それは、へその緒を切るために使われる。だから、刃が赤黒く汚れている。
 ある日、私は履歴書を書いていた。証明写真を貼ろうとして、鋏が無いことに気づいた。確かにあったはずなのに。
 そこで、赤ん坊の自販機の鋏のことを思い出した。
 私は自販機へ行って、鋏を借りて、証明写真を切り出した。
 縁が赤黒く汚れてしまったが、この履歴書は、産婦人科医院に出すので、話せばわかってくれるだろうと思う。
ホラー
公開:25/03/28 22:57

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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