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早朝に若い男がぶらぶら歩いていると道端の粗大ゴミコーナーにちょっと大きな鏡が棄ててある。鏡面は曇っているが銅製の額縁が立派なので男は家に持ち帰った。家では結婚してまもない妻が「まあ素敵な鏡」と気に入った。彼女がよく映らない鏡を毎日のように磨いていると、ぼんやりと顔が映り始めた。横から男が覗き込むと映っているのは妻とは似ても似つかない、不細工な顔立ち。妻はあわてて鏡から顔を離す。彼女は結婚前に整形したことを告白しようかと悩んだ。しかし声をかけたのは夫である「君の顔がどうであっても僕は君を愛しているよ」妻は整形前の顔が鏡に映ることを夫に話した。夫はそれからも同じように妻に優しく接し、妻も夫を愛し慎ましくも幸せな夫婦生活が続いた。妻は鏡を捨てずに毎日磨いた。すると鏡に映ってきたのは整形前の顔でもなく今の顔でもなく第三の顔、幸せそうで愛らしい美貌の女性である。これが君の本当の顔だよと夫は言った。
その他
公開:25/03/28 17:25
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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