夜の山へ

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 夜の山へ、女二人が、一人の男を運んでいく。
 女二人は、母親と娘で、男は、父親だ。
 父親は死んでいる。母親と娘は、その死体を山に埋めに来たのだ。
「空気が綺麗だわ」
 母親が言う。
「お父さんも喜んでるでしょう」
 娘が言う。
 やがて二人は手頃な場所を見つける。
 二人は穴を掘る。
「土がいい匂いね」
 母親が言う。
「お父さんも喜んでるでしょう」
 娘が言う。
 やがて大きな穴が完成する。父親の死体はそこに埋められる。
 ふくろうが鳴いている。
 二人は、山を後にする。
「ここなら警察も気づかないわよね」
 母親が言う。
「お父さんも喜んでるでしょう」
 娘が言う。
 二人は車で走り去る。
 数日後、娘だけが再び山を訪れる。
 そして、父親を埋めた場所を掘り返し、父親の顔を見て、その表情を確認する。
 娘は母親に電話をかける。
「やっぱりお父さん喜んでるわ」
ホラー
公開:25/03/31 13:29

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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