行方不明駅

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がたんと停車して目を覚ました。外は暗い。知らない駅だ。車内には私ひとり。ドアが開いた。ひゅうと風。どこの田舎の駅だ。薄暗い改札口は旧式の木製。駅員が笑って「お疲れ様でした」「ここは?」「行方不明駅です。初めてですね。行方不明の方がいらっしゃる駅です」「私が?いつもの電車で眠っただけだが。帰りの電車は?」「もうありません。不定期で未定です。遅いので駅舎でお休みください」宿直室みたいな部屋で寝た。
翌朝、駅員が起こしてくれた「散歩でもしますか」周辺を歩いた。ありふれた街路。駅員の話では、行方不明者がくるところ。私もそうなのか。ここは来たような気がする。デジャビュか。歩くうちにふらりと入った喫茶店でコーヒーを飲む。若い女店員に声をかけると話がはずむ。魅力的。昔から知り合いのようなデジャビュ娘。元の生活はぼんやりとあやふや。ここに住んでもいいかという気になる。次の電車がいつ出るかもわからないし。
その他
公開:25/03/25 17:06

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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