陽だまりを聴く

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「ダジャレじゃなくてさ、文字で表すとサンサンなんだよね、太陽の音って」

蒸した教室の窓を開け放ちながら、思い出したように悠太が言った。

「そうなの?…ポコポコとかパチパチとか、そんな感じの音がしそうなイメージ」

机上を斜めに割って光る、蜂蜜色の陽だまりを指先でつつきながら私は笑った。

「聞いてみる?」

悠太がポケットから取り出したのは丸い練乳色の陶器の鈴だった。5両編成の赤い列車がワンポイントで描かれている。

「これ、陽鈴っていうんだ。太陽光に反応する。形は違うけど…風鈴の太陽版かな」

陽だまりへ漬けるように悠太が陽鈴をかざすと、乳白色だった鈴はみるみる空色に透き通っていき、雲の線路を赤い列車が音色とともに走りだした。

サンサーン…

砂が零れるのとも、葉が擦れ合うのとも違う、サンサンという温かで柔らかな音色。

「…ね?」

悠太の笑顔って、こんなに大人っぽかったっけ…?
青春
公開:25/03/25 12:00
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花笑みの旅人( 気の向くまま )

作品を開いてくださりありがとうございました~。
もし気が向いたら、また遊びに来てください♪

しばらく投稿はお休みします。

2025.3.25

 

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