青い翅の蝶

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 この世には、綺麗な青い翅をもつ蝶が存在する。ずっとファンタジー生物のように感じていた。というより、実在しようがしまいがどっちでもいい程度の関心だった。

 デートで訪れた博物館、蝶の標本で足が止まり、その輝きに魅入られた。
「きれいだよね。これ、青色なわけじゃなくて、光のあたり方で、そう見えるんだって」
「そうなんだ」と相槌を返す私の声は、きっと上の空。

 会話もないまま時が流れた。

 ふと我に返り隣を見る。しまった。だいぶ失礼なことをした気がする。
「ふふっ、そんな顔しないで。良いよね。僕も好き」
 その視線は標本に移っている。好きという言葉に心が揺れるのは自意識過剰だろうか。
「博物館に誘ったのは、色々なものに出逢えるから。君の好きを、ひとつ見つけた」
 この人は、見かけによらず策士なヤツなのかも。私は、そばの解説文を読み上げる。
「へぇ、モルフォ蝶って腐った果実とか食べるんだ」
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公開:25/03/27 01:25

いぬさか

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。

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