保護者席の鳥

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 娘の中学の卒業式。良かった、間に合った……急いで保護者席に座ろうとしギョッとした。私の席の隣に鳥がいる。木の幹のような嘴に青みがかった灰色の羽毛。どう見ても、ハシビロコウじゃない?
 不思議なことに、先生も生徒も他の親たちも、その鳥を気にするそぶりが全くない。私は落ち着かない気持ちで鳥の隣に座った。
 式が始まった。校長の話が長い。子供たちの呼名が延々と続く。私は前のめりになりそうになる体勢を立て直そうとする。実は私が式の開始ギリギリになったのは、今日に限って朝からお腹の調子が悪かったからなのだ。こういう時にしか着ないスーツに脂汗が滲む。お腹の中で腸がゴロゴロのたうっている気がする。私は絶望的な気持ちで隣を見た。
 いいなぁ。泰然自若として。
 気を抜いたら思わずオナラが出た。
 でもいい。ハシビロコウが、そっと私の手を握ってくれたから。
ファンタジー
公開:25/03/26 11:35

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