自戒

0
1

自分自身を檻に閉じ込めたのは私だった。鍵は指の間から零れ落ち、床の隙間に消えた。内省という名の蜘蛛が壁を這い、私の瞳に糸を張る。

「自戒」と呉々も唱えながら、私は反対に進む。思考の裏地が剥離し、本音という名の裸体が露わになる。

毎朝、鏡に映る顔は少しずつ他人のものになっていく。認めたくない本質が、皮膚を突き破って浮かび上がる。

戒めるほどに、戒められる対象は増殖する。静寂の中、私は無限に分裂していく。自己という煙は形を変え、風に溶けては凝固を繰り返す。

光の粒子が記憶を書き換え、過去の自分が未来の自分を裁く法廷が開かれる。裁きの言葉は既に宙に漂い、捉えどころのない罪状が私を取り囲む。そして気づく—戒めは自己欺瞞の別名に過ぎないと。
その他
公開:25/03/21 17:33

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容