刹那の溶蝕

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虚ろな瞳孔で鉛の息を吐く彼女の腕から、第九惑星が発芽する。

幽鬱な天井裏で腐朽する図書館の断片。そこで蠕動する活字は互いを喰らい、新たな意匠を紡ぐ。

「汝の思考は既に他者の所有物」と囁く風鈴の音色に、彼女は自らの舌を千切って差し出した。

記憶の縫合線が解け、内側からこぼれ落ちるのは誰の視点か。

臍の奥から這い出る蒼白な蟲が綴る詩は、未だ存在しない言語で書かれている。

彼女は自分の指を逆さまに生やし、空間を掻き分けた。そこに開いた亀裂から覗くのは、生まれる前の自分。

「我々は既に終焉を経ている」
その他
公開:25/03/21 17:28

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