視線の先に

大手企業で面接官として学生達に対峙する私。実は、ここの社員ではない。
私には”視線が見える”という特殊能力がある。今、面接官に必死にアピールを続ける学生がどこを見ているかをチェックする。
面接官は主に未来に対しての質問をする。私は学生が見据える未来をチェックする。
この会社でノウハウを学びたい。社長になりたい。人脈を広げたい。そういった向上心を視線の先に見る。
目は口程に物を言う。視線を見れば、相手の嘘・本当・用意していた答えの全てが分かる。
学生に扮した企業スパイも少なくない今の時代、私のような人材は重宝される。
故に多くの企業の面接に私は同席している。
その為、中には私を二度見する学生もいる。
”この人…この前受けた会社にもいたよな？双子？”
視線からそんな本心が見えた。
それが３度４度と続くと、学生は面接そっちのけで私を見つめてくる。
学生界隈では有名になりつつある私であった。