母屋(もや)を編む
2
4
胸の奥がもやもやと落ち着かず、眠れぬ夜のつれづれに編み物でもしようと思い立つ。
ベッドサイドの籠からかぎ針を取り、スタンドの明かりを一段下げた。軽く目をつむり――ふぅ、と針先に息を引っ掛け、手探りに編んでいく。吐息とともに、胸からこぼれたもやもやが気糸に紡がれ、在るか無きかの感触を伴って形を成し始めた。
始めてしまえば、何を編むかは指が憶えている。無心に手を動かすうち、物憂く曇っていた胸はすっきりと晴れ、鼻歌でも歌いたい気分になってきた。
最初の時もこうだったかしら。ほんの数年前が、不思議と幾世紀も経たようにおぼろげで懐かしい。
ふわりと温いお腹の上、編みあがったもやもやは円い繭の形をして、耳をそばだてれば、とくり。とくり。と微かな鼓動さえ聞こえそうだ。
仕上げに伸ばした緒の先へ息の根を吹き込み、抱き締めるように胎へ着せる。
ねんねんころり、ねんころり。
もやすみなさい、あと少し――。
ベッドサイドの籠からかぎ針を取り、スタンドの明かりを一段下げた。軽く目をつむり――ふぅ、と針先に息を引っ掛け、手探りに編んでいく。吐息とともに、胸からこぼれたもやもやが気糸に紡がれ、在るか無きかの感触を伴って形を成し始めた。
始めてしまえば、何を編むかは指が憶えている。無心に手を動かすうち、物憂く曇っていた胸はすっきりと晴れ、鼻歌でも歌いたい気分になってきた。
最初の時もこうだったかしら。ほんの数年前が、不思議と幾世紀も経たようにおぼろげで懐かしい。
ふわりと温いお腹の上、編みあがったもやもやは円い繭の形をして、耳をそばだてれば、とくり。とくり。と微かな鼓動さえ聞こえそうだ。
仕上げに伸ばした緒の先へ息の根を吹き込み、抱き締めるように胎へ着せる。
ねんねんころり、ねんころり。
もやすみなさい、あと少し――。
その他
公開:25/03/20 21:16
ぱせりん祭り
もやもや祭り
週回遅れ……
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます