秋の夜

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 秋の夜、タクシーに乗ったら、車内に鈴虫の声が響いていた。
「鈴虫の声がするね」
 私が初老の運転手にそう言うと、
「うるさいですよね?」
 と彼は答えた。
「いや、そんなことは」
 と私が言いかけた時、彼は脚を僅かに動かした。
 彼の足元から、くしゃっ、と軽いものが潰れる音がした。
ホラー
公開:25/03/22 20:52

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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