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日向ぼっこをしていた春の君のお膝の上に、一輪の白梅兎がぷくんと跳ねて飛び咲いた。陽だまりの中、くてんと両足を投げ出し、鼻をひくひくさせてお昼寝を始めた白梅兎の愛らしさにその頭を撫でようとしたところで、春の君は微笑む。

「もしかして、さっきまで秋殿のお膝の上にいたのかしら?」

穏やかな寝息をたてて眠る白梅兎の丸い右耳の付け根あたりを、春の君は優しい眼差しで見つめる。そこには、甘い香りのする小さな橙色の家が建っていたのだ。

「金木犀のいい香り。移り香は心へ棲み着き、時にこうして香りでお家を建てて、移り家になってしまうことがあるのよ」

春の君の声へ反応するように兎の丸耳がひょこひょこ動くと、更に移り家から甘い香りが運ばれてくる。しばらくして、甘い香りに誘われてやってきた別の白梅兎を見て、春の君はまた微笑んだ。

蕾のように丸い尻尾の上に、爽やかな潮風の移り家が堂々と建っていたからだ。
ファンタジー
公開:25/03/21 23:09
更新:25/03/22 11:27

花笑みの旅人( 気の向くまま )

作品を開いてくださりありがとうございました~。
もし気が向いたら、また遊びに来てください♪

しばらく投稿はお休みします。

2025.3.25

 

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