誤謬

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表層に浮かぶ神経信号の波。灰白質の起伏に投影される外界は変質を遂げる。認識せよ、知覚は翻訳であり、翻訳は常に裏切りの原型である。

概念の格子が現象を捕獲し、分類の檻に閉じ込める。格子の間隙から滲む実在の破片。

脳髄の褶曲は自己言及性の密林。思考は己の痕跡の上を歩み、円環に囚われる。無限後退する意識の鏡像。

外的刺激は内的地形図に従い変形され、変形された地形図はさらに刺激を歪める。

情報処理装置としての脳は入力に支配されず、予測生成器として外界を先取りする。現実は知覚に先立つのではなく、知覚こそが現実に先行する。

因果の網に囚われた認識は、相関関係を因果と誤認し、錯覚を実体化する。必然性という概念は偶然性を否定することで生まれた安易な救済である。

意識は脳の分泌物ではなく、無意識という海に浮かぶ小島。水面下には巨大な地層が広がり、見えざる基盤として意識を支える。
その他
公開:25/03/21 19:26

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