終焉学

0
1

消失点に立つ者は、消失そのものを見ることができない。私が死を観測すれば、それはもはや死ではなく、単なる変容の仮説に過ぎない。

灰は炎の記憶ではなく、炎は灰の予見でもない。両者は同一過程の恣意的な分割点だ。死とは断絶ではなく、観察者の視点移動に過ぎない。

「生の対極に死があるのではない。生の対極には無関心がある」と私は囁く。銀の鏡に向かって。その鏡は私の姿を映さず、私の不在だけを映し出す。


静脈の中を逆流する血液が心臓に還り、その心臓は収縮でなく拡張によって血を押し出す。「死は逆行する川であり、私は遡上する魚ではない」

私は書物の終わりに立ち、最初のページを読み直す。最後の一字が消えるとき、私も消える。しかし本は閉じられず、別の読者に開かれる。

死とは読者の交代であり、物語は中断なく続く。私の独白は既に誰かの傍白となり、私の終わりは誰かの始まりと同一の地点に位置する。
その他
公開:25/03/21 19:14

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容